2023.01.30
イヌのフィラリア症予防~基礎編
犬を飼ったら、フィラリア予防は当たり前~ってくらい、かなり浸透しているように思ってしまうフィラリア症ですが、みなさまいかがですか??
え?フィラリアって何?って方はお願いします!読んでください!!
フィラリアね!もちろんやってるよ~って方、ありがとうございます。これからも絶対にやってください。そしてお時間があれば、これ、読んでください。予防のやり方のポイントを今回おさらいしていただければと思うのです。どうしてこんな薬を月に1個のめば防げるのか、ということや、なんで12月まで?ってところまで。
さぁみんなで、レッツおさらい!!蚊を見る目がかわりますよ(笑)
1.フィラリアってなんぞや?
簡単に言うと、そうめんみたいな寄生虫です。心臓と肺の間の肺動脈という血管がすみかです。大人のフィラリアは30センチほどあります。想像してみてください。気持ち悪すぎますね。でもいるんだなぁ~これが・・・。正確には、犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)という名前があります。“犬”が名前についている通り、犬に寄生する寄生虫です。寄生虫とはその名の通り何かに寄生していないと生きていけない生物です。なので、基本的には寄生する相手(宿主といいます)を殺すような強さはありません。宿主と仲良くできるだけ長く寄生し、寄生虫自身が繁殖し子孫を絶やさないようにしています。フィラリアの寿命は7~8年ほどといわれています。フィラリアには雄と雌が存在し、雄雌が寄生している場合、雌は子どもを産みその子どもたちは、蚊によってまた別の犬や動物に寄生していきます。すごいですよね・・・。寄生された犬ですが、寄生したフィラリアの数が少なければ、なんの症状もなく過ごせると思います。しかし、寄生数が増えると、寄生場所の血管では収まり切れず、心臓の方になだれ込みます。そして心不全をおこすのです。いくら犬と仲良しといえ、恐ろしい寄生虫に違いありません。
2.どうやって感染するの?
ではどのようにして、フィラリア症になってしまうのでしょうか?・・・そうです。蚊からもらいます。正確にはフィラリアの赤ちゃん(ミクロフィラリア)を飲み込んでいる蚊に、ワンちゃんが血を吸われたとき、蚊はワンちゃんの血を吸っているだけなのですが、蚊の中のフィラリアの赤ちゃんが勝手にワンちゃんの皮膚の中に入っていくんです。フィラリアの赤ちゃんおそるべし!!!そこで、ん???皮膚に入るの??そのまま血管に入るのではないの??と、疑問をもたれますよね。そこがみそで、その感染の仕方をしてくれるからこそ、駆虫がうまくいくのです!!!だから、皮膚に入ってくるとか、ホラーな感じが、逆にありがとう、というわけです。それは次の項目で・・・。
ちょっとマニアックに説明すると・・・
まず蚊の中に入ったフィラリアの赤ちゃん(ミクロフィラリア=L1)は、蚊の体内でL1→L2→L3と成長し、感染幼虫(L3)となります。このL3の幼虫をもった蚊に血を吸われたワンちゃんの皮膚の中にL3幼虫が侵入してきます。L3幼虫はワンちゃんの皮膚の下で、3~10日で脱皮をして、体内移行幼虫(L4)となりワンちゃんの組織の中で発育し、感染してから70日前後で未成熟虫(L5)になると考えられています。(薬はこのL4幼虫で100%の駆虫効果を発揮するといわれています!)そして、ワンちゃんの体に侵入してから約120日前後で未成熟虫(L5)は、血管内へと侵入し、最終寄生先の肺動脈へ移行そうし、成虫になるそうです。成虫になるまで、感染から6か月ほどかかります。
3.じゃあどうやって防ぎましょう?
蚊からうつるんだから、蚊にさされなければいい!んですが、そういうわけにもいきません。なので駆除する薬を飲むしかない。しかし本当に先人はすごいですね。そんな薬を開発してしまうんですから!昔の日本にはヒトのリンパ管に寄生するフィラリアも存在していたんですよ。薬のおかげで、あと日本は島国なおかげで、なんとか撲滅できています!が世界にはまだヒトのフィラリアも存在しているそうです・・・。イヌフィラリアについては、都会では予防がひろまり、かなり減っているとはいえ、なくなってはいません。野生動物や野良犬など、予防できていないこたちがたくさんいるからです。仕方ありませんね。これも自然です。でも、知ってしまったあなたは、予防薬をせずにはいられないはずです。予防すればかからずにすむのですから・・・。
飲み薬は、蚊が出始めて1か月後から蚊が血を吸わなくなった1か月後までの毎月1回飲むようにしましょう。こすもす動物診療所のあたりでは5月から12月です。(お住いの地域によって違います!)蚊を見かける4月はなぜ飲まなくていいのか?蚊がいなくなる12月になぜ飲まなくてはいけないのか?そこをしっかりわかっていただきたいです。12月の飲み忘れが命とりになることもあります!!!
薬はフィラリアの幼虫を駆除する薬です。駆除といっても、殺すだけで死骸は残ります。腸に寄生する虫は駆虫したら便と一緒に外に出せますが、血管には出口がないので血管内の寄生虫の死骸は残ったまま。だから、皮膚の下にいる間に殺すんです。死骸は残りますがとても小さく、やがて組織などに吸収されるなどして無害なものになります。フィラリアは大人になるまでに皮膚の下で成長しますからその間に殺して大人にさせない、血管に入らせないことが予防になっています!!「薬は月1回飲んでください。」ときくとなんとなく、「薬は1カ月間効いています。」って感じませんか?しかし実はこの薬、飲んで24時間くらいしか効いていません。しかもL4幼虫は100%の駆除率らしいですが、ほかの幼虫は駆除しきれないそうです。感染してから10日ほどでL4幼虫になり、2カ月弱は薬が効くL4幼虫としてすごします。なのでこの間に月1回お薬を飲んで、過去に感染して皮膚にいるであろう幼虫を殺していき、血管にフィラリアが入らないようにすることで予防が成立しています。なので、12月、もう蚊は見かけないと思いますが、11月に感染していたフィラリアL4幼虫を最後12月にバシッとやっつけてください!!薬は未来1カ月を守るのではなく、過去1カ月をきれいにしているのですね。
飲み薬のほかに、1年間効く注射や、つける薬もあります。薬の種類などは病院によって取り扱いの有無が違うので、病院に相談してくださいね。
4.予防薬を飲む前に検査をする意味
フィラリア予防は、5月から12月の間月に1回お薬を飲む。ということがわかっていただけたと思います。では、もう一つ、お見知りおきを。毎年5月に予防薬を始める前には必ず、動物病院で血液検査による、フィラリア抗原検査を受けてから、お薬を飲むようにしてください。毎年ちゃんと予防薬を飲んでるのに、なぜこの検査を受けなければならないのか?と思われている方も少なくないと思います。理論上、毎年予防期間しっかりお薬を飲んでいただければ感染することはないのですが、飲み薬ですので、もし万が一知らない間に吐いてたり、1カ月以上投薬を忘れてしまったり、万が一の感染があり、大人のフィラリアの雄雌が寄生していて、赤ちゃんフィラリアを産んでしまっていたら、、、ワンちゃんの体に赤ちゃんフィラリアがたくさんいる状態を知らずに、予防薬を投与してしまったら、薬は赤ちゃんの虫を殺します。大量の虫を一気に殺してしまったとき、最悪ワンちゃん自身がアナフィラキシーショックというショック状態に陥ることが知られています。なので、念のため、ワンちゃんのために毎年投与前には少し血液をとらせていただき、フィラリア抗原検査(大人のフィラリアに感染していないか)をして、フィラリアの感染がないことを確認してから、お薬を処方させていただきます。ご協力よろしくお願いいたします。
5.まとめ
フィラリアとは、そうめんみたいな寄生虫で、主に犬の血管(肺動脈)に寄生します。フィラリアの赤ちゃんを体内に含んだ蚊に血を吸われることで感染します。フィラリアは感染後しばらく皮膚の下で成長しながらやがて血管にはいりこむので、皮膚の下にいる期間にお薬を飲むことで、血管内に寄生されないように予防していきます。予防期間は、この辺り(兵庫県)では5月から12月です。予防前にはフィラリアに感染していないことを血液検査で必ず確認してからお薬を始めましょう。
要約って難しい・・・。文章を簡潔に書くのが苦手です(苦笑)。
とにもかくにも、フィラリアは今も存在しています。予防すれば防げる病気です。大切なご家族のためにも、必ず正しい予防をお願いいたします!!
わからないことは、動物病院にどんどんききましょう!!