2025.07.08
猫の慢性腎臓病(腎不全)が治った・回復したというケースはある?飼い主さんができること
慢性腎臓病(腎不全)は猫がかかりやすい病気のひとつ。
残念ながら治る病気ではありませんが、飼い主さんが愛猫にしてあげられることはきっとまだあるはずです。
悔いが残らないように、大切な愛猫にしてあげられることや治療方法、猫の慢性腎臓病(腎不全)が治ったケースはあるのかなど見ていきましょう。
猫の慢性腎臓病(腎不全)の主な治療は「緩和治療」
緩和治療とは、病気の進行を遅らせたり症状を緩和させたりして、快適に過ごせるようにしていく治療方法です。
主に以下のようなことを行います。
●内服薬
●点滴
●サプリメント
食事療法は、腎臓への負担を減らすために特別に設計されたフードを与える方法です。
症状や状態などに応じて、吐き気止め・食欲増進・高血圧などの薬、点滴やサプリメントを与えることもあります。
低下した腎機能が回復することはないため、猫の慢性腎臓病(腎不全)は治ることはありませんが、症状が緩和することで、回復したり治ったりしたように感じることもあります。
慢性腎臓病(腎不全)はどうしても治してあげることができないため、進行を遅らせつつ、苦痛を取り除く治療を行ってあげましょう。
腎機能の回復が期待できる「AIM」
AIMとは、猫や人間の体内にも存在するタンパク質のひとつです。
老廃物などを掃除する働きがあるため、成分を用いた猫の腎臓病の治療薬が開発されています。
慢性腎臓病(腎不全)は、腎臓の機能が低下して老廃物がたまることでさまざまな症状がでる病気です。
老廃物を掃除するAIMを応用した薬を与えることで、腎機能の回復に期待ができるというもの。
AIM を投与することで急性腎不全を速やかに改善させ、
慢性化する危険を回避することが可能であると考えられる。―東京大学大学院 医学系研究科・医学部 ネコに腎不全が多発する原因を究明
「ネコでは AIM が急性腎不全治癒に機能していない」
現在は開発中で、2027年春頃の実用化を目指しているとされるので今後に期待しましょう。
慢性腎臓病(腎不全)の末期になった猫に飼い主ができること
慢性腎臓病(腎不全)の末期になると、食欲不振や嘔吐、体重減少などが現れやすいです。
少しでも楽に過ごせるように飼い主さんが日々サポートしてあげてくださいね。
食事のサポート
末期で食欲不振になったときは、療法食や総合栄養食にこだわりすぎず食べられるものを探してあげましょう。
食べることで体調が回復することがありますし、好きな物を食べることで精神的に満たされることもあります。
ウェットフードやおやつなど、いろいろと試してあげてください。
温めたり口元まで運んであげたりと食べやすいようにサポートしつつ、愛猫が食べられるものを探してあげましょう。
トイレのサポート
慢性腎臓病(腎不全)の末期になると、筋力が落ちたり足元がふらついたりしやすいので、トイレのサポートをしてあげましょう。
猫は、歩けるうちは体調が悪くてもトイレで排泄しようとすることが多いです。
またぎやすいようにフチの低いトイレを使う、トイレ周りで漏らしたときのためにペットシーツを敷くなどしましょう。
歩けないときは、そのまま排泄できるように、ペットシーツを設置できるマットを使ったり、おむつをしたりして対処してあげてください。
水分補給のサポート
慢性腎臓病(腎不全)になると脱水になりやすく、脱水になると腎不全が悪化しやすいです。
悪循環になってしまうため、水分補給できるようにサポートしてあげましょう。
置く水の数を増やす、新鮮な水を与えるなどし、できるだけ飲んでくれやすい環境を整えてあげてください。
水を飲まない場合は、水分の多いフードやスープを与えたり、シリンジで飲ませたりして工夫しましょう。
また、水分補給として自宅で皮下点滴をすることもできるので獣医師に相談しましょう。
生活環境のサポート
慢性腎臓病(腎不全)になると体温調整がしにくくなり、低体温になりやすいです。
暑すぎるのは良くありませんが、低体温になると呼吸がしにくくなったり体調が悪化したりしやすいので適切な体温管理を心がけましょう。
末期で歩けないときは床ずれしないように注意。
定期的に体勢を変えたり、介護用のペットマットを使ったりして体への負担を減らしてあげてください。
ストレスや負担を与えない
快適に過ごせるように、なるべく静かで落ち着ける環境を作ってあげましょう。
末期になると抱っこやスキンシップが負担になることもあるので、必要以上に構ったり触ったりしないことも大事です。
皮下点滴や強制給餌も負担になることがあるので、様子を見ながらどうするのか考えましょう。
やめるタイミングはそれぞれですが、改善が見込めずストレスを与えていると判断したときにやめる飼い主さんが多いです。
看取りの覚悟をする
症状が悪化すると最終的に看取りの段階に入ります。
慢性腎臓病(腎不全)の最期は、苦しむこともあれば、眠るように静かに息を引き取ることもあります。
猫は人の声などから感情が読めるとも言われますし、優しく声をかけて愛情を注いであげましょう。
苦しいとき、一緒にいてほしいときなど、何かを伝えたいときに頻繁に鳴くことがあるとされるため、なるべく愛猫の気持ちに寄り添ってあげてくださいね。
まとめ
猫の慢性腎臓病(腎不全)は完治しませんが、治ったと感じるほどに一時的に体調が良くなることもあれば、余命宣告よりも長く生きるケースもあります。
なるべく苦しまずに穏やかな最期を迎えられるように治療してあげましょう。
監修者
獣医師 小川篤史
明石・西明石の動物病院「こすもす動物診療所」院長
(宮崎大学農学部獣医学科卒業・明石市獣医師会所属)
兵庫県加古川市の動物病院に勤務後、兵庫県明石市に「こすもす動物診療所」を開院。
犬や猫、小動物を中心に診療・予防医療を行う。