2025.06.17
猫の健康診断は必要ない?血液検査だけでも良い?
猫の健康診断は義務ではないので、受けるかどうかは飼い主さんが決めることになります。
元気に長生きしてほしいという気持ちから受けさせることもあれば、猫には健康診断は必要ないと考える飼い主さんも。
なんのためにするのか、どんな意味や効果があるのかを知り、愛猫に受けさせるかどうか考えましょう。
猫に健康診断が推奨される理由
猫は自分で健康管理をすることはできませんし、こういった理由から健康診断が推奨されています。
病気の早期発見ができる
健康診断を受ければ体の異変にいち早く気付くことができます。
猫は言葉を喋れないので、愛猫に不調があるときは飼い主さんが気づくしかありません。
しかし、猫は不調を隠したがるため、飼い主さんが異変に気付いたときには、すでに病気が進行していることもあります。
人間と同じで、病気の早期発見・早期治療ができれば、それだけ猫が回復する可能性が高くなります。
愛猫の健康データが取れる
定期的に健康診断を受ければ、愛猫の健康に関するデータが取れます。
健康診断の項目は複数あり、赤血球数や尿のPH値など、それぞれの数値や状態が目に見えて分かります。
一般的に正常とされる数値の範囲がありますが、当然ながら個体差もあるため、愛猫のデータがあった方が安心。
数値が下がったり異常があったりしたときに分かりやすくなり、予防対策もしやすくなります。
猫に健康診断は必要ないと考える人もいますが、今後の比較材料やその後の健康管理に役立ちます。
健康診断の主な内容と受診項目
猫の健康診断にはさまざまな項目があり、その中から何をするのか飼い主さんが決めます。
病院によっても異なりますが、一般的には以下の検査などを行います。
身体検査
視診・触診・聴診・体重測定などの基本的な検査です。
目や耳、口や歯、お腹周りやしこりの確認、聴診器を使って心臓や肺の音を確認するなど、獣医師がその場で診ていきます。
血液検査
採血をして血液の成分を調べ、異常がないかを診ます。
赤血球や白血球の数、腎臓や肝臓などの臓器の状態、ホルモン異常、体内の炎症など、幅広い検査が可能です。
尿と便の検査
尿と便の成分を調べ、腎臓や泌尿器系などに問題がないかを確認します。
尿のPH、結晶や細菌、糖尿病や泌尿器疾患、寄生虫、消化管の出血などが分かります。
エコー検査
超音波を使って、リアルタイムで腎臓・肝臓・心臓などの臓器を観察します。
腫瘍や結石ができていないか、心臓の動きや血液の流れに問題がないかなどを診ます。
レントゲン検査
胸部や腹部などのレントゲンを撮り、異常がないかを調べます。
骨や関節に問題がないか、心臓・肺・腎臓などの臓器の形や大きさなどを確認します。
猫に健康診断を受けさせるときに知っておくべきこと
猫に健康診断を受けさせる前に知っておいた方がいいことを見ておきましょう。
愛猫に合った検査内容を選ぶ
健康診断の項目はいろいろあるので、愛猫に合った検査を選びましょう。
全ての項目を受けないといけないわけではありませんが、血液検査だけなど、検査項目を減らし過ぎないように注意してください。
1つの検査で全ての病気が判明するわけではなく、いくつか検査をして総合的に判断することで正確性が上がります。
とくに7歳以上になるとシニア期に入るため、血液検査だけでなく、エコーやレントゲン、尿検査もした方が安心。
愛猫の年齢や健康状態などをふまえて選びましょう。
年齢や頻度を考える
猫に健康診断をするときは愛猫の年齢を考えましょう。
初めての健康診断は生後6~8週のころが理想だとされており、それから1年に1回の頻度で受けることが推奨されています。
年に1回だと多く感じるかもしれませんが、人間の健康診断も基本的には年に1回行います。
猫は人間よりも年齢を重ねるペースが早く、病気リスクが高くなることから、7歳以上になると1年に2回のペースが推奨されています。
ペット保険は適用にならない
基本的には、猫の健康診断の費用はペット保険の対象外です。
健康診断を受けたことで病気などが見つかれば対象になることもありますが、基本的には対象外だと考えておきましょう。
健康診断の費用は、一般的な内容であれば5,000円~10,000円ほどが目安。
レントゲン、エコーなどのオプションを追加すると、合計で15,000~30,000円ほどかかることが多いです。
動物病院や検査内容、オプションなどによって変わるため、事前に聞いておきましょう。
動物病院が苦手なら往診も検討する
ストレスなどが理由で、健康診断は必要ない、猫は病院に行かない方がいいと考えるのであれば、往診も検討しましょう。
往診とは、獣医師が自宅に来て医療行為を行ってくれるサービス。
外出することなくそのまま自宅で診てもらえるため、猫の負担が減りやすいです。
通常、健康診断は動物病院で行いますが、往診で受けられることもあるので、ストレスが心配であれば検討しましょう。
健康診断を受けるときの準備や必要なもの
猫の健康診断をするときは、事前に準備や確認が必要なものがあります。
当日になってからでは遅いこともあるので、早めに確認しておきましょう。
予約をしておく
どの動物病院でも予約制というわけではないですが、可能であれば予約しましょう。
予約なしで受けられたとしても、待ち時間が長かったり、希望する検査が受けられなかったりすることがあります。
予約が必要ない場合でも注意点などを告げられることがあるため、一度は確認のために連絡をしておきましょう。
絶食が必要なこともある
血液検査やエコー検査を受ける場合、基本的には絶食が必要です。
水は飲んでもいいですが、お腹の中に食べ物が残っていると検査結果に影響を与えることがあります。
12時間ほどの絶食が推奨されているため、前日の食事も逆算してから与えましょう。
検査によって絶食が必要かどうか異なるので、念のために動物病院に問い合わせてください。
尿や便を自宅で採取する
尿検査や便検査をするときは、基本的には自宅で採取することになります。
尿をとるときは、トイレのペットシートの上にサランラップを敷いたり、ペットシートを裏返したりしてシリンジなどで採取します。
便は乾燥しないように、サランラップやビニール袋で包むなどしましょう。
時間が経ったものだと正しく検査できないことがあります。
便は前日のものでも大丈夫ですが、尿は3時間以内のものが推奨されています。
取れないときは病院で採取してくれることもあるので事前に相談しておきしょう。
ストレスを与えないように対策する
猫は動物病院が苦手なことが多いので、ストレスを与えないように対策しましょう。
たとえば、キャリーケースをリビングに出して匂いを付けておく、猫の匂いがするタオルや目隠しになるような物を病院に持って行くなど。
絶食が必要ないときは、猫を落ち着かせるためにも、お気に入りのおやつを持参するのもおすすめです。
聞きたいことをまとめておく
何か気になることがあれば、事前にメモなどにまとめておきましょう。
たとえば、食欲や毛並み、排泄、おかしな行動など、気になることや症状などを書き、必要なら写真や動画も撮っておきます。
症状を細かく伝えたほうが獣医師も判断しやすいですし、その場になると忘れてしまうことがあるので書き残しておくのがおすすめです。
まとめ
猫に健康診断は必要ないかといえば、そんなことはありません。
病気の早期発見・早期治療・予防にも繋がるので、健康を守るためにも定期的に受けましょう。
どんな検査を受けるのかは任意ですが、年齢もふくめて愛猫に合ったものを選んであげてください。
監修者
獣医師 小川篤史
明石・西明石の動物病院「こすもす動物診療所」院長
(宮崎大学農学部獣医学科卒業・明石市獣医師会所属)
兵庫県加古川市の動物病院に勤務後、兵庫県明石市に「こすもす動物診療所」を開院。
犬や猫、小動物を中心に診療・予防医療を行う。