しなやかな体つきや愛らしい肉球など猫のチャームポイントにはいろいろとありますが、
やはり一番は「ゴロゴロ音」といえるのではないでしょうか。
しかし、この「ゴロゴロ音」のメカニズムや鳴く理由について理解されている飼い主さんは少ないと思います。
また、ずっと愛猫がゴロゴロ鳴き続けていると大丈夫なのかな?と不安になる方もいるでしょう。
よって今回は猫の「ゴロゴロ音」について、獣医師監修のもとで解説していきます。
監修獣医師 小川篤史先生 こすもす動物診療所院長(宮崎大学農学部獣医学科卒業・明石市獣医師会所属) 最初は別の道を選択するも、獣医になる夢を捨てきれず獣医学科を受験。兵庫県加古川市の動物病院に勤務後、兵庫県明石市に「こすもす動物診療所」を開院。犬や猫、小動物を中心に診療・予防医療を行う。 |
猫の「ゴロゴロ音」とは?
猫のゴロゴロ音は人間でいう喉仏のあたりに該当する
「喉頭(こうとう)」と呼ばれる部分の筋肉が収縮し、声帯が振動することで鳴っていると考えられています。
しかし、これはあくまで推測であり、他にも
喉元を通る太い血管の一つである「大静脈」の血液の流れが増えることで血流が渦を巻き、その振動が横隔膜によって増幅されてゴロゴロと音が鳴る
という説や
他の動物と違って、猫には「ニャー」と鳴くときに使用する「声帯」に加えて、「仮声帯」と呼ばれる別の器官も存在しており、ここを動かすことでゴロゴロと喉を鳴らしている
という説などもあります。
どの説が正しいのかは今でもはっきりしていませんが、この「ゴロゴロ音」が猫の魅力をアップしているということは間違いないでしょう。
猫がゴロゴロと鳴く5つの理由
では、猫はどんなときにゴロゴロと鳴くのでしょうか?
猫がゴロゴロと鳴くときに考えられる5つの理由について、詳しく解説していきます。
①機嫌が良い
猫がゴロゴロと鳴く最も多い理由としては、飼い主さんに撫でられている・抱っこをしてもらっているときなどにリラックスしたり満足して機嫌が良いときと考えられます。
ゴロゴロと満足そうに鳴いてくれる愛猫を撫でている時間は、飼い主さんにとっても至福のときとなるでしょう。
②緊張やストレスを落ち着かせたい
動物病院への通院や、知らない他人が自分のテリトリーに入ってくるときなどの「緊張やストレス」を感じているタイミングにゴロゴロと鳴いていれば、それは猫が自分を落ち着かせるために鳴いている可能性があります。
そのようなときはゴロゴロと鳴く以外にも、毛を逆立てたり、瞳孔がまん丸に開いて黒目が強調されていたりなどの仕草も一緒に見られることが多いでしょう。
③ 体調が良くない
猫のゴロゴロ音には、痛みなどを和らげる鎮静効果があるといわれています。
よって、猫がしきりに体の特定の場所のみをなめながらゴロゴロと鳴いていたり、元気や食欲がないときなどにゴロゴロと鳴いていたりしていれば、体調不良を訴えている可能性もあるので、必要が必要です。
④ 甘えたい
猫がゴロゴロと鳴きながら飼い主さんの膝の上で寝ていたり、飼い主さんの足などにスリスリしていたりするならばそれは猫が飼い主さんに甘えているというサインになります。
猫と飼い主さんとの間に深い信頼関係があることを意味しているため、たっぷり愛猫を甘やかしてあげましょう。
⑤ 母猫と子猫の間のコミュニケーション
母猫と子猫の間でお互いにゴロゴロ音を鳴きあっているとしたら、それは親子でコミュニケーションをとっているかもしれません。
子猫は、生後すぐにはまだゴロゴロ音を出すことはできませんが、二日齢までには出せるようになるといわれています。
母猫と子猫が寄り添いながら、ゴロゴロとしているときは、可能な限りそっとしてあげることをおすすめします。
猫のゴロゴロ音の聞き分け方
このようにさまざまな鳴く理由が考えられる猫のゴロゴロ音ですが、聞き分けるポイントは音の高低にあります。
基本的に機嫌が良かったり甘えていたりするときなどに鳴くゴロゴロ音は『中低音で大きさもやや控えめとなり』、反対に緊張やストレスを感じているとき、体調不良のときのゴロゴロ音は普段と比べて『低音となる』ことが多いと考えられています。
しかし、この音の違いはとても些細なものであるため一般的に人間の耳で聞き分けることは難しいことが多いようです。
そのため飼い主さんはゴロゴロ音だけに注目するのではなく、愛猫がゴロゴロと鳴いているときの様子や仕草とあわせることによって、猫の気持ちを理解するようにしましょう。
猫のゴロゴロ音による効果
最近の研究により、猫のゴロゴロ音には猫だけではなく人間にもメリットがあることが判明しました。
そもそも音とは空気の振動によって発生するものであり1秒間の振動回数 のことを「周波数」といい、単位は「ヘルツ(Hz) 」で表されます。
100 Hz以下のものを低周波音と呼び、体の緊張をほぐす役割がある副交感神経を優位に働かせる効果があるといわれています。
実は、猫のゴロゴロ音の周波数は約25ヘルツと低く、低周波音に当てはまるため、ゴロゴロ音を人間が聴くことによって副交感神経が優位となり、疲れやストレスなどを改善したり免疫力をアップしたりする効果が期待されています。
さらに低周波音には、副交感神経を優位に働かせるだけではなく、人間をリラックスさせて不安感を減らす作用のある「セロトニン」というホルモンの分泌効果もあるとも考えられています。
今回、生理学的手法を用いて、猫のゴロゴロ音が人にリラックス効果をもたらすことを、初めて明らかにした。
ー情報処理学会研究報告「猫のゴロゴロ音についての初期検討」
愛猫を撫でたり抱っこしたりしているだけでも飼い主さんにとっては十分な癒やし効果があると思いますが、ゴロゴロ音によってその効果が高まるということは嬉しいですね。
ずっとゴロゴロ鳴いている時に考えられること
抱っこをしていたり動物病院へ連れて行ったりするなどの短い時間に猫が長時間ゴロゴロと鳴くことはよくありますが、そうではなくずっと猫が鳴き続けているときにはどのようなことが考えられるでしょうか。
飼い主さんに何か要求している
猫が飼い主さんの方を見て、大きな音でゴロゴロと鳴いているときは甘えたいから抱っこしてほしい、なでてほしいなどの何かしらの要求が満たされていない可能性があります。
また飼い主さんが長時間、留守をしていた後に帰ってきたときにも猫が高くて大きいゴロゴロ音で鳴きながら出迎えることもあります。こちらも、さみしくて甘えたい気持ちを表現していると考えられます。
どちらの場合でも猫が満足するまで撫でる、抱っこするなどのスキンシップをとってあげることをおすすめします。
反対に、飼い主さんが猫を抱っこすると嫌がりながらゴロゴロ鳴く場合もあります。これは抱っこしてほしくないというストレスや不機嫌のため鳴いている可能性が高いため、一度猫を離してそっとしてあげるようにしましょう。
体調が悪い
猫のゴロゴロ音には鎮静効果があるため、特に機嫌が良い、甘えたいような仕草や緊張を感じるような状態でもないのにずっとゴロゴロと鳴いているならば体調不良を疑ったほうが良いかもしれません。
どこかが痛いため、そこの痛みを落ち着かせたり、吐き気や怠さなどをなだめるためにずっとゴロゴロと鳴いていたりするといった体調不良だけではなく猫風邪や喘息などの呼吸器疾患の症状の一つである可能性もあります。
猫の状態がいつもと違うと感じたら、すぐに動物病院へ相談するようにしましょう。
猫がゴロゴロと鳴くのはなぜ?【まとめ】
猫のゴロゴロ音は、とても愛らしいものですが、全ての猫が鳴くことができるというわけではありません。
まだ迎えたばかりなどであまり慣れていない猫の場合は、ゴロゴロと鳴かない傾向があるともいわれていますが、中には飼い主さんと信頼関係を築いていても一生ゴロゴロ音を出さない猫もいます。
愛猫がゴロゴロと鳴くことができるならば、ぜひこの記事を参考にして鳴く理由やそのときの気持ちなどを理解してあげてくださいね。