2025.12.04
猫が咳をする原因は?危険な咳の見分け方

猫はあまり咳をしませんし、不調があっても隠したがります。
普段から愛猫の咳を聞きなれていないため、病気が潜んでいるのではと心配になる飼い主さんも。
咳をする原因はさまざまなので、症状なども確認しつつ、必要であれば動物病院へ連れて行くようにしてください。
猫が咳をするよくある原因と症状

猫が咳をしたら病気というわけではありません。
体に異常があることもあれば、まったく問題ないこともあります。
さまざまなケースがあるので、よくある原因を見ておきましょう。
生理現象
猫も人間と同じで、ただの生理現象で咳をすることがあります。
この場合は、喉に刺激を受けて防御反応で咳が出ただけなので、とくに問題はありません。
たとえば、ホコリを吸い込んだとき、水を飲んだとき、何かを食べたときなど。
元気や食欲があり他の症状がない、たまに咳をしたり1回咳が出たりする程度であれば、生理現象である可能性が高いです。
また、早食いや、低い食器が原因で咳が出ることも。
早食いをしたり、頭を低く下げて食べたりすると、気管に入りそうになって咳が出やすくなります。
食事や水を飲むときにたまに咳が出るのであれば、食べ方や食器を見直しましょう。
猫喘息
猫喘息は、猫が咳をする代表的な病気です。
咳はよくある初期症状のひとつで、喉の違和感から舌なめずりをしたり、痰を飲み込むような仕草を見せたりしやすいです。
ストレスが引き金となって発症することもありますが、主な原因は、ハウスダスト・花粉・タバコの煙・芳香剤などのアレルゲンによるアレルギー。
発症すると気管支が炎症を起こし、喉や呼吸に異変が起こります。
症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しやすく、重症化すると呼吸不全を引き起こすことがあります。
人間の喘息と同じように慢性化しやすく、完治するのが難しい病気。
動物病院での治療のほか、換気や掃除をしたりして愛猫をアレルゲンから遠ざけましょう。
心臓病
心臓病になると必ず咳をするわけではありませんが、咳をするケースもあります。
心臓病は心臓に関する病気の総称で、さまざまなものがあります。
機能が低下して肺に水分がたまったり、心臓が肥大して気管を圧迫したりすると、咳が出やすいです。
初期症状はほとんどないため、飼い主さんですら気づかないことが多いです。
進行すると、元気や食欲のなさが目立ちやすく、ふらつきや呼吸の速さ、活動量の低下、咳などの症状が現れることがあります。
高齢であるほど発症率は高くなりますが、若い猫でも発症することがあるので注意しましょう。
猫風邪
猫風邪も咳がでやすい疾患のひとつです。
よくある初期症状は、くしゃみ・鼻水・目やに・食欲減退などで、進行すると咳が出たり発熱したりしやすいです。
猫風邪とは、ヘルペスウイルスやカリシウイルスなどによる感染症の総称。
軽症のまま自然に治ることもありますが、重症化すると肺炎を引き起こすことがあります。
免疫力が弱いと重症化しやすいため、とくに子猫や高齢猫、疾患を患っている猫などは注意しましょう。
肺炎
肺炎になると、痰が絡んだような咳が出やすいです。
その他にも、元気や食欲の減退、発熱、息をするときにお腹が大きく動いたり、口を開けて苦しそうに呼吸をしたりすることもあります。
肺炎とは、細菌やウイルス、真菌などに感染して炎症が起きた状態。
肺は酸素を取り込む臓器なので、炎症が起こると呼吸がしにくくなって咳が出やすくなります。
急に悪化することがあり重症化すると命に関わるため、異変を感じたら早めに動物病院に連れて行きましょう。
異物の誤飲
猫が異物を飲み込むと、気道や食道などを刺激して咳が出ることがあります。
下痢をしたりよだれが出たり、何度も吐こうとする、咳き込むものの何も吐かないなどの症状が見られやすいです。
状態や誤飲したものによって症状が変わり、呼吸困難を引き起こすことも。
たとえ誤飲したものを吐き出したとしても、破片が残っていたり気管に傷ができていたりすることもあるため、念のために診察を受けましょう。
病院での治療方法と咳の治し方

まずは猫が咳をする原因を特定し、病気や疾患の治療を行いましょう。
病気などが影響して咳が出ている可能性があるため、原因となる病気や疾患を治すことが大事です。
原因を特定しつつ、それぞれの治療と並行して咳にも対処していきます。
咳の対処方法は、猫の状態や病気などによって異なります。
炎症や呼吸のしにくさがある場合は、ステロイドや気管支拡張薬、去痰薬などの薬を使って症状を抑えていきます。
食事ができないときは点滴をして脱水の補正をしたり、呼吸ができないときは酸素吸入をしたりと、対処方法はさまざま。
いずれにしても早めに対処したほうが治りやすいので、異変があれば診察を受けましょう。
愛猫の咳が危険かどうか見分ける方法

人間もそうですが、猫にも危ない咳とそうではない咳があります。
もちろん個体差もありますが、危険な状態のときは以下のことが起こりやすいです。
何日も咳が続く
猫はあまり咳をしないとされているので、頻繁にしたり何日も咳をし続けたりするときは注意しましょう。
猫の咳が治らないときは、喘息の原因になっているアレルゲンが家の中にある、病気を患っているなど、何かしらの異常がある可能性が高いです。
呼吸に異常がある
呼吸に異常があるときは緊急性が高いので、なるべく早く診察を受けてください。
たとえば、口呼吸をする、呼吸音がおかしい、呼吸が浅くて速いなど。
健康な猫は鼻呼吸をしますし、呼吸音は耳を澄まないと聞こえないほど小さいです。
喘息や気管支炎、肺炎、心臓病など、さまざまな可能性が考えられます。
舌や歯茎の色が悪い
猫の舌や歯茎は、健康状態を表すパラメーターのひとつです。
健康な猫であれば、明るめのピンク色をしています。
一方、青紫色・灰色・白色などは、チアノーゼと呼ばれる状態。
血中の酸素が不足しており、心臓病や重度の呼吸器疾患のときなどに現れやすいです。
元気や食欲がない
元気と食欲のなさは多くの病気に共通している症状です。
猫は弱っていることを悟られたくないという本能があり、体調が悪くても隠したがります。
しかし、飼い主さんが気づくほどに元気や食欲がなく、咳もするのであれば、異常がある可能性が高いです。
猫が咳をするときに飼い主ができること

猫が咳をする原因はさまざまですし、様子がおかしいのであれば動物病院に行く必要があります。
しかし飼い主さんにもできることがあるので、自宅でできる対処法を見ておきましょう。
咳が出にくい環境を整える
猫が咳をするときは自宅の環境を見直してみましょう。
たとえば、換気や掃除、猫砂や首輪など。
アレルゲンが咳の原因になることがあるので、こまめに換気や掃除をしましょう。
猫砂の粉塵を吸い込んで咳が出ることもあるので、舞い散らない物を選ぶことも大事です。
空気が乾燥していると咳が出やすくなります。
湿度は50~60%ほどが最適だとされているため、加湿器などを使って調整してください。
首周辺を圧迫すると咳が出ることもあるので、首輪を外すか負担の少ないものに交換するなどしましょう。
動画を撮っておく
動物病院に行ったときに診察しやすくなるので、可能であれば猫が咳をするときの動画を撮っておいてください。
猫の咳の音は「ケホケホ」「ヒクッ」「ゼーゼー」など、さまざまなパターンがあります。
痰が絡んでいるときは「ゴホゴホ」と、むせるような咳が出やすいです。
「フンフン」と鳴る音は、猫喘息や猫風邪の可能性があります。
また、猫が咳をする仕草は吐くときと似ているため、えづいているのか咳か判断が難しいことも。
動画を撮っておけば、獣医師が正しい判断をしやすくなります。
まとめ
猫の咳には、問題があるものとそうではないものがあります。
何度も頻繁にしたり、食欲や元気がなかったり、他の症状もある場合は、危険な咳だといえます。
咳をする病気や疾患は数多くあるので、異常があれば早めに診察を受けましょう。

監修者
獣医師 小川篤史
西明石こすもす動物診療所院長
(宮崎大学農学部獣医学科卒業・明石市獣医師会所属)
最初は別の道を選択するも、獣医になる夢を捨てきれず獣医学科を受験。
兵庫県加古川市の動物病院に勤務後、兵庫県明石市に「こすもす動物診療所」を開院。
犬や猫、小動物を中心に診療・予防医療を行う。