2025.03.16
犬のアトピー性皮膚炎とは?原因と治し方を解説
犬のアトピー性皮膚炎は、強いかゆみがある皮膚疾患です。
放置すると症状が悪化して、より掻きむしってしまい、どんどん悪循環に陥りやすいです。
かゆいのは辛いですし、自然に治ることはほとんどないため、飼い主さんがしっかり対処してあげましょう。
アトピー性皮膚炎になる主な原因
犬の3~15%ほどがアトピー性皮膚炎を発症するといわれます。
原因を知らないとより悪化させてしまうことがあるため、なぜアトピー性皮膚炎になるのかを知っておきましょう。
アトピー性皮膚炎は遺伝が関係している
犬のアトピー性皮膚炎は、遺伝が関係する皮膚の病気です。アレルゲンが体に入ることで免疫が過剰に反応し、さまざまな症状が起こります。
犬アトピー性皮膚炎(canine atopic dermatitis:CAD)は,遺伝的素因を有した炎症性・瘙痒性アレルギー性皮膚疾患であり,環境抗原に対する IgEが関与する特徴的な症状を認めると定義されている
―犬アトピー性皮膚炎の診断および治療に関する指針作成の試み
根本的な原因は生まれつきの体質のため、完治させることは難しいです。
人間の場合も、喘息や、お酒に弱いかどうかは体質が関係していますが、体質は簡単に変えられるものではありません。
それと同じで、犬のアトピー性皮膚炎も完全に治すことは難しいため、治療を続けて症状を抑えていく必要があります。
遺伝が関係していることから、柴犬、シーズー、フレンチブルドッグ、トイプードル、パグ、レトリバー種などはアトピー性皮膚炎になりやすいとされています。
バリア機能が低いと発症しやすい
バリア機能が低いとアトピー性皮膚炎になりやすいとされます。
バリア機能とは、アレルゲンや微生物、紫外線などから肌を守る機能のようなもので、犬によって個体差があります。
機能が低い犬は、肌が乾燥しやすい、刺激に弱いなどのデメリットがあり、肌トラブルを引き起こしやすいです。
アレルゲンにも対抗しにくくなるため、アトピー性皮膚炎を発症しやすくなります。
バリア機能が一時的に低下している場合は改善することができますが、遺伝的にもともと弱いケースもあります。
遺伝が原因でバリア機能がうまく働かない犬は、アトピー性皮膚炎になりやすいとされています。
アトピー性皮膚炎のアレルゲンは複数ある
アトピー性皮膚炎はアレルゲンによって引き起こされます。
よくある犬のアレルゲンは、ダニ・カビ・花粉・ハウスダストなどで、接触することで免疫が反応して症状が起こります。
アレルゲンは空気中にも漂っているため、完全に避けて生活をすることは難しいです。
どのアレルゲンに反応しているのかは、動物病院で検査を受ければ分かります。パッチテストや血液検査を受けることでアレルゲンを特定できるので、まずは診察を受けましょう。
アトピー性皮膚炎のよくある症状
皮膚炎にはさまざまな種類があります。
似たような症状がでることもあるため、別の皮膚病と勘違いしてしまうこともあります。
犬のアトピー性皮膚炎にはどんな特徴があるのか見ておきましょう。
発症初期に起こりやすい症状
犬のアトピー性皮膚炎の主な症状はかゆみです。
体がかゆいため頻繁に体を掻くようになり、舐めたり噛んだり、壁に体をこすりつけるなどの行動がみられます。
何度も掻くので毛が抜けてしまい、薄毛が気になることもあります。
犬のアトピー性皮膚炎は、生後6ヵ月~3歳ごろに発症することが多いです。
初期症状は軽度であることも多く、体を掻く頻度が増えたり、抜け毛が増えたりする程度であることも。
そのため初期段階では気づかず、発症から数年経って悪化してから気付くこともあります。
悪化してから起こりやすい症状
頻繁に体を掻くことで炎症が起こり、さまざまな症状がでてくることがあります。
掻きむしることで毛が抜けたり切れたりし、薄毛が悪化して脱毛が目立つようになります。ほかにも、肌の赤みが目立つ、強く掻くことで傷ができてかさぶたになる、肌が乾燥してフケがでやすい、など。
皮膚が厚くなってガサガサになったり、色素沈着を起こして部分的に黒くなったりすることもあります。
犬のアトピー性皮膚炎は、アレルギー性皮膚炎のひとつで、細菌感染などとは別物です。
しかし、掻き続けることで炎症が悪化し、膿皮症やマラセチア性皮膚炎など、別の感染症を引き起こすこともあります。
アトピー性皮膚炎になったときの症状の特徴
犬がアトピー性皮膚炎になったときは、顔周り・耳・脇・お腹・股・足先・尻尾の付け根あたりに現れることが多いです。
好発部位としては,顔,耳介内側,腋窩部,鼠径部および肢端部などが挙げられる
―犬アトピー性皮膚炎の診断および治療に関する指針作成の試み
逆に、背中から腰のあたりに現れることはほとんどありません。
左右対称に症状が現れるのも特徴で、左右同じ箇所に赤みや脱毛などがみられやすいです。
また、年間を通して症状がでますが、季節によって症状が変化することも。
犬のアトピー性皮膚炎は、アレルゲンが原因です。
ダニは夏、スギ花粉は春先、カビは梅雨の時期など、原因となっているアレルゲンが増える季節は、症状が悪化しやすくなります。
アトピー性皮膚炎の治し方
犬のアトピー性皮膚炎は、遺伝や体質がもともとの原因のため、自然に治ることはほとんどありません。
動物病院での治療や自宅でのケアを行って症状を緩和してあげましょう。
犬のアトピー性皮膚炎に効果がある薬を使う
犬のアトピー性皮膚炎を治すときは、薬を使うのが一般的です。
ステロイドやアポキルなどを使い、かゆみや炎症を抑えて治療していきます。
ステロイドは炎症を抑える効果、アポキルは痒みを抑える効果などがあり、犬のアトピー性皮膚炎の治療薬としてよく用いられます。
塗り薬や飲み薬、注射などがあり、獣医師の判断で使い分けていきます。
市販薬もありますが、自己判断で使うのは止めておきましょう。
犬のアトピー性皮膚炎と似たような症状がでる他の疾患もあるため、まずは動物病院で診察を受けるようにしてください。
症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しやすい皮膚病でもあり、判断が難しいです。
副作用もないとはいえないため、かかりつけの獣医師に従いましょう。
シャンプーを使ってスキンケアする
皮膚を正常に保つためにも、シャンプーなどでスキンケアをしてあげましょう。
症状がでるということは、犬の肌にアレルゲンが付着しているということです。
週に1~2回ほどシャンプーしてアレルゲンや刺激物を洗い流してあげましょう。
おすすめは、低刺激で保湿効果のあるシャンプー。
アトピー性皮膚炎になると肌が乾燥し、皮膚のバリア機能が弱っているため、保湿をするのが効果的だとされます。
セラミドなどの保湿成分配合のシャンプーやトリートメント、保湿ローションを使うなどして、うるおいを与えてあげましょう。
肌を清潔にしつつ保湿を行えば、バリア機能が回復しやすいです。
バリア機能が正常になれば肌の防御力が高くなるため、アトピー性皮膚炎の症状もおさまりやすいです。
胃腸に優しく肌に効果的な食事を与える
食事にはたくさんの栄養が含まれているため、できるだけ肌に効果的な成分が入っているフードを与えましょう。
アトピー性皮膚炎の場合は、オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸、ビタミンAなどの成分が入っているフードがおすすめ。
オメガ3脂肪酸は炎症を抑える働きがあります。オメガ6脂肪酸は、皮膚のバリア機能のもとになるセラミドを構成する成分。ビタミンAは、バリア機能を強化して保湿効果に期待ができる成分です。
また、アトピー性皮膚炎は胃腸とも関係しているともいわれています。
腸内環境を改善することで、免疫力がアップしたり、皮膚のバリア機能が向上したりする可能性があります。
健康な腸を保ちつつ、肌に効果的な成分を摂ることで、アトピー性皮膚炎の改善に期待ができます。
まとめ
アトピー性皮膚炎の主な原因は遺伝です。
現在のところ完治する方法は見つかっていませんが、しっかりと治療をすることで、症状を最小限に抑えることができます。
シャンプーなどのスキンケアや食事にも気をつけ、できるだけ愛犬の苦痛を取り除いてあげましょう。
監修者
獣医師 小川篤史
西明石こすもす動物診療所院長
(宮崎大学農学部獣医学科卒業・明石市獣医師会所属)
最初は別の道を選択するも、獣医になる夢を捨てきれず獣医学科を受験。
兵庫県加古川市の動物病院に勤務後、兵庫県明石市に「こすもす動物診療所」を開院。
犬や猫、小動物を中心に診療・予防医療を行う。